本/ピアジェに学ぶ認知発達の科学
一言メモ:ピアジェの原著のもとになった研究は、1950年代、60年代のものですが、訳者の中垣は2007年時点において、ピアジェの研究の骨格(パラダイム)は有効であり、それを更新する研究はないとしています。
興味深い点の1つは「シェム」と「シェマ」の概念です。一般に英語では「スキーム」と訳され、そのまま横滑りで日本語でも「スキーム」の語が当てられます。ピアジェは「スキーム」を2つの別の概念で捉えています。「シェム」は体験的に習得する思考の原型のようなもので、「シェマ」はその原型から作られる表現形式で「言葉」などの表現の例を指します。言葉になる前に論理などの概念を体験的に習得するということです。
哲学対話で、言葉による表現が完結しなくていいという態度は、知能の発達のプロセスのパラダイムにも沿ったものと言えるかもしれません。
ニューロサイエンスの科学者ボー・ロットは学習と発達と進化を、生物の環境適応として同質のものと捉えています。
たぶん、大人になっても、ことばになる以前の思考が体験の中から生まれると考えることはそれほど的外れではないように思います。
『ピアジェに学ぶ認知発達の科学』ジャン・ピアジェ 訳:中垣 啓 2007
抜粋
p19 第一章 中垣(訳者)による解説- 9 シェムとシェマ
・・・思考の水準における概念に相当するものが感覚運動知能の水準にもあるはずだと考え、それをピアジェはシェムとよんでいるである。
p75 第四章 中垣(訳者)による解説-3 発明・発見・創造
inventionの通常の訳は「発明」であるが、ここではあえて「創造」と訳した。ここで言われている認知発達上のinventionとは、個人にとって新しい認識が獲得されることである。
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