本『最強脳のつくり方大全』

図書館で借りて『最強脳のつくり方大全』(ジェームズ・グッドウィン著)をつまみ読みしました。

本の結論的には、体の健康を気遣って暮らすことが脳の健康につながるということです。要するに生活習慣が脳のコンディションを決定づけるということです。

この記事の結論は

週に5日、1回あたり30分2kmのウォーキングをしよう

ということです。

筆者のジェームズ・グッドウィンは、「おわりに」の中で、私的な助言として3つ習慣を提案しています。①「運動すること」②「概日リズムを守ること」③「人とのつながりを持ち続けること」が脳の働きに効き、衰退を防ぐことにつながるとしています。

②の概日リズムとは、サーカディアンリズム(circadian ryhthm)の訳語で、およそ1日のリズムという意味です。脳がだいたい24時間を単位に活動の時間と休息の時間を繰り返すので、それに合わせて生活するよ良いということです。

グッドウィンのおすすめは、そんなこと言われなくても分かっているというようなお題目です。だから余り神経質に捉えない方が良いのかもしれません。


そうとはいえ、詳細となるとあまりはっきりした基準を私たちは持っていません。

①「運動」については『運動脳』アンデシュ・ハンセンが有名です。この本には、脳の状態をベストにするには最大心拍数(概算式/220-年齢)の70~75%の運動強度のランニングを45分間、週に3回。ベターなのはウォーキング30分を週に5回を推奨しています。

運動強度って何?

これについは、クアオルト・ウォーキングを積極的に推進している上山市のサイト

https://www.city.kaminoyama.yamagata.jp/site/kurort/kuaoruto-top.html#:~:text=%E3%80%8C%E4%B8%8A%E5%B1%B1%E5%9E%8B%E6%B8%A9%E6%B3%89%E3%82%AF%E3%82%A2%E3%82%AA%E3%83%AB%E3%83%88%E3%80%8D%E3%81%A8,%E3%81%A8%E5%85%B1%E3%81%AB%E5%89%B5%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

中之条研究

http://www.yamasa-tokei.co.jp/top_category/8000steps.html

https://xtech.nikkei.com/dm/article/FEATURE/20150113/398600/#:~:text=%E4%B8%AD%E4%B9%8B%E6%9D%A1%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%81%AF%E3%80%81%E9%9D%92%E6%9F%B3%E6%B0%8F,%E3%81%AE%E6%8C%87%E6%A8%99%E3%82%92%E7%B7%A8%E3%81%BF%E5%87%BA%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

が参考になります。

クアオルト・ウォーキングによると、基本的にウォーキングは20分~40分2kmを30分くらいで歩くかんじです。ちなみに運動強度は分速70mで「3(METs)」です。

中之条研究に照らすと、2km30分で、2850歩(1歩0.7m)で、もう少し長い距離、3kmを歩くと4000歩を越えて「うつ病の予防」に効果があるとされています。病気の予防として効果があるのは1日に8000歩、そのうち20分程度の早歩き(3000歩)が妥当だとしています。

『最強脳のつくり方大全』p56によると、英国国民保険サービスによるガイドラインを引用して、19歳~64歳の人については「中程度の有酸素運動を週に150分以上おこなう」と紹介しています。

運動強度の視点からすると「3(METs)~」が中程度です。


ところで、『最強脳のつくり方大全』『運動脳』両著に共通するのが「脳トレは役に立たない」という主張です。『最強脳のつくり方大全』ではドイツの科学者の研究をその根拠にしています。両者は同様に、そのゲームやパズルなどの腕前が上達することはあっても、他の場面で「注意力」「記憶力」はもとより、その他の認知能力全般を向上させることはないと断じています。

これとは真っ向から反対の研究結果を提示しているのが日本の川島隆太です。(総合的には「早寝・早起き・朝ごはん」が脳に効くという点で、川島氏とグッドウィンの主張とは同じです。)


両者の意見の対立をどうと捉えるか。

PCR検査の発明者、また、ちょっと変わり者のノーベル賞受賞者と知られるキャリー・マリス博士の本『マリス博士の奇想天外な人生』に興味深い話が出てきます。私が読んだのは2016年前後なので、詳細は覚えていませんが、HIV(エイズ)の治療法に関する医学論文の多くが基本的な資料として引用している医学論文の核心部分についてバックグラウンド・データが添付されていないということを指摘しています。最初の研究者の結論だけを引用して、その後の研究者が論理を展開するのですから、いちばん最初の研究がとても大切な意味を持ちます。

『最強脳のつくり方大全』『運動脳』の2冊に共通しているのは、自分自身の研究ではなく、他の研究者の結論を引用している点です。それに対して川島は自分自身が指揮を執って研究、実験をして得た情報です。どちらも正しいのでしょうけれど、その視点、着眼点の違いに留意するする必要があります。つまり、理論を正当化するために実験する訳ですが、どのような結果を歓迎するか、作業仮説を立てて実験をするのだから、ある程度のバイアスが生じています。

この記事での結論としては、自分で考えるしかない。となるのですが、そのときに様々な科学的知見を参考にすることが大切だろうということです。(※TVの人気番組でグレープフルーツが〇〇に効くという放送があった翌日にスーパーの棚からグレープフルーツが消えるという類の話はよくあります。)

そこで、自分の頭で導きだしたのが冒頭の、

週に5日、1回あたり30分2kmのウォーキングをしよう

です。



追加情報

運動強度についてさらに詳しくはスポーツ用品メーカーデサントのサイト記事が参考になります。

ウォーキングと運動強度について

https://www.descente.co.jp/media/sports/walking/26389/

運動強度全般について

https://www.descente.co.jp/media/sports/walking/13316/

※消費エネルギー(kcal)=運動強度(METs)x 体重(kg)x 時間 x 1.05

有酸素運動全般について

https://www.descente.co.jp/media/sports/26826/