ヒント/4つの愛

昨日(2026年3月29日)に三河病院の体育館で開催されたイベント「未来街マルシェ」に行って、出展ブースの1つ「哲学対話」に参加した。1セッションが多分40分くらいで、2つのセッションに参加した。そのうち、2つ目の方のテーマに「愛とは何か」が選ばれた。

その場では、「ペットを介在させた方が、隣人愛を表現しやすくなるのではないか」という自分の発言が、その時思いつきで言ったにしては良い発言だったと思った。

さて、私は2019年4月~5月にスペイン、サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼の旅に出た。巡礼の目的はいくつかあったが、「愛とは何か」について考えるのもテーマの1つだった。巡礼路は全部で800km、私の場合は平均すると一日あたり20km、40日間をかけて毎日歩いた。だから、愛について6週間くらい考えていたともいえるかもしれない。

巡礼を終えて5年が経過した2024年の3月になって知人から、巡礼の体験を他の人と共有した方が良いと言われ、結果的に、20頁くらいのボリュームの物語風の冊子を作り、南部かを知人に配った。そのタイトルを『ブエンカミーノ/愛ある他者に出会う旅』とした。

巡礼路には世界各地から人がやって来る。「オラ(こんにちは)」「ブエンカミーノ(良い旅路を)」と朝から晩まで、出会う人のほぼ全ての人が同じようにお互いに挨拶を交わす。そうした挨拶以外に、立ち話、カフェでのおしゃべり、夕飯時に歓談した人たちだけでも30か国を数えた。

愛ある他者とは、次のようなことだ。

まず、巡礼路に巡礼を目的にやって来る人のほとんど全ての人が善男善女だということ。次に、彼らを迎え入れる地元の人達、宿のスタッフ、カフェの店員、巡礼路の維持管理をする人達もまた、善男善女だ。

とはいっても、365日24時間そうだという人は恐らく少ない。巡礼者である間、あるいは地元の人であれば巡礼者と接している時間は、善男善女を演じ、皆それを楽しんでいると言った方が良いかもしれない。

来る日も来る日も善男善女に囲まれて過ごす日々。20キロ100キロ、500キロ歩いても、善男善女の路がまだ先へと続く。

そんな場所は世界広しといえども滅多にはない。

巡礼の最中から巡礼を終えた時まで、私の心にあり続けたのは「この世のパラダイス(天国・理想郷)」という印象だった。

ところで、『サーバント・リーダーシップ』ジェームズ・ハンター(p122)には、ギリシャ語では「愛」を表す言葉に4種類あると紹介されている。

①エロス(eros)性的な誘引、性的欲望に基づいた感情 

②エストルゲー(estorge)家族に対する愛情 

③フィリア(philos)同朋や親友との間に生まれる互恵的関係としての愛 

④アガペー(agape)差別のない行為の基となる無条件の愛。

巡礼に溢れる善男善女の愛は③フィリアのような愛。フラテルニテ「博愛」「友愛」と呼ばれるものだろうと思った。そして、数年たっても、巡礼という体験がとても愉しく思い起こされるのは、40日間の間、善男善女の中の1人を演じ続けたことで、自分の心の中に、善男善女の人格が出来上がっていて、その感覚も同時に思い出されるからだと思う。

こうして文章を書いている瞬間にも、「私たちは幸せだわ」と、巡礼路のちょううど中間地点となるサーグーンという街の宿で、一緒になったフランス人の女性が話していた姿が脳裏に浮かんできた。

愛についてもう少し。

キリスト教の聖書から、第一コリント人への手紙 13節4~7

Love is patient, love is kind. It does not envy, it does not boast, it is not proud. It does not dishonor others, it is not self-seeking, it is not easily angered, it keeps no record of wrongs. Love does not delight in evil but rejoices with the truth. It always protects, always trusts, always hopes, always perseveres.

これは、日本でキリスト教会式の結婚式で愛読される「愛の賛歌」の言葉として知られている。誰の本だったか忘れたが、結婚した2人がその真意を知るのは、相互を求めて熱烈に愛し合う時が過ぎ、しばらくたってからのことだと書かれていた。

その真意とは、愛とは「patient(待つこと)」であり「persevere (耐えること)」なのだ、と。

昭和の時代に人々が時々口にした「恋ははしかのようなもの」という言い回しは、なかなか言い得て妙だと思った。

【愛について考えるための参考書】

『愛するということ』エーリッヒ・フロム

『フロムに学ぶ「愛する」ための心理学』鈴木晶

『サーバント・リーダーシップ』ジェームズ・ハンター